Tokyo
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1年の感謝を贈るお歳暮

江戸時代から続く暮れのご挨拶

年の暮れに、日頃の感謝を込めて贈り物を届ける「お歳暮」。この習慣は室町時代に公家から始まり、一般的になったのは江戸時代と言われている。新年に先祖の霊をお迎えする御霊祭りのお供え物を、年の暮れに本家に届けることから始まった習慣だ。地方によっては年末に娘が嫁いだ婚家に贈り物をすることから始まったという説や、江戸時代の商家の支払いの時期に由来するという説など、発祥については諸説ある。
「盆暮れ」とお中元とお歳暮はひとくくりにされがちだが、お中元は中国の道教の思想に由来する。中国では上元(1月15日)・中元(7月15日)・下元(10月15日)に3人の天神様の生誕祭が行われ、それぞれの日に供物を捧げる習慣があるのだが、その「中元」と時期の近い日本の「盆礼」とが結びつき、その時期に贈り物をする習慣が定着したのが現在の「お中元」なのだ。

江戸時代から続く暮れのご挨拶
お歳暮の人気商品、山形県天童市の銘酒「出羽桜」。

お歳暮を贈ってみよう

それでは、実際にお歳暮を贈るにはどうしたら良いだろうか。松坂屋上野店のギフト担当・佐藤幸雄さんによると、松坂屋では10月頃からウェブサイトでお歳暮の取り扱いがスタートし、11月からは本格的なお歳暮時期に突入する。ギフトセットや相手が喜びそうなものを選び注文すると、12月頃の希望の時期に、相手先に届けてもらえるシステムだ。以前は、直接訪問して挨拶とともに渡していたが、親戚がいろんな地方に散らばっていたり、週末に在宅とは限らなかったりと暮らしが多様化した現代では、配送を利用することも一般的になった。ただし、その場合は贈り物に挨拶状を同封するか、手紙を書くなどして、相手に感謝を伝えることをお忘れなく。お歳暮の包装は、赤と金の水引と熨斗(のし)をつける。表書きに「お歳暮」と書き、その下に少し小さく名前を書く。現在はエコロジーの観点から簡易包装も進んでおり、短冊熨斗や、水引と熨斗がプリントされた包装紙を利用することもある。

お歳暮を贈ってみよう
松坂屋に入社して19年。ギフトを担当する佐藤幸雄さん。

形を変える真心のやりとり

お歳暮の人気商品として上位に来るのは、新年に神仏にお供えし、みんなが集まったときに振舞われる日本酒、焼酎、ビールなどの酒類。20年ほど前はハムやお菓子セット、海苔、佃煮、お茶など、お正月料理に使われ、保存ができる食品が定番だった。近年は産地直送の生鮮食品や、もらった人が好きなものを選ぶことができるカタログ型のギフトセット、レストランやホテルでのくつろぎの時間を贈る体験型のお歳暮、さらには年末にとっておきのグルメを楽しむ自分へのギフトも登場している。虚礼廃止により取引先へのお歳暮を取りやめる企業が増加し、家族や暮らしの形も変わったが、1年の締めくくりに誰かに感謝を贈るお歳暮は、これからも続くTOKYO GOODだ。

形を変える真心のやりとり
赤と金の水引きが印刷された熨斗(のし)を巻いて、お歳暮の包装は完了。

データ

いつ始まったの? 室町時代に始まり、江戸時代に広まったと言われている。
どこで見ることができるの? お歳暮時期のデパート。
数字データ お歳暮の金額の目安は、1万円以内が相場。松坂屋では、5,000円前後のギフトセットが充実している。
注意事項 お歳暮は感謝の気持ちを表す贈り物。突然、日持ちのしない生鮮食品や、高価な品物を贈って、相手に負担を感じさせてしまうのは本末転倒。張り切りすぎは控えよう。

取材協力:松坂屋上野店