Tokyo
008

築地、本日の拾得物

東京の台所、中央区築地市場

夜明け前から、忙しく人々が行き交う築地市場。今朝も荷役用のターレが、日本各地のおいしいものを乗せて市場内を往来する。まさに東京の台所といえる場所だ。面積約23ヘクタールの広大な敷地に1日あたり平均4万2,000人が集まり、1万9,000台の車両が入場する。水産物だけでも約16億円分の取引があり、その取引規模は世界最大級だ。その正門横にあるのが、忙しさの中でうっかり落としてしまった物の拾得物掲示板。そこには、築地市場ならではのユニークな落し物が掲出されている。

東京の台所、中央区築地市場
東京の台所、築地市場全景。

生ものから指輪まで。人の数だけ落し物あり

3月〈いちご練乳、銀ジャケ〉、5月〈白いちご、レタス、水菜〉、6月〈生あご〉、9月〈あん肝、ほやわさび〉。掲示板に掲載される落し物で、その時期の旬がわかるという声もあるほど。拾得物は、食品ならば冷蔵庫または冷凍庫に保管し、掲示板に記載するとともに場内放送でみんなに知らせる。落とし主が現れたら、本人確認と押印の上で返却。ただし、生ものならば3日を越えると廃棄される。観光客などたくさんの人が集まる築地市場だから、落し物は食品に限らない。〈パスモ、クレジットカード、名刺入れ、現金、運転免許証…〉。さらに、印鑑と指輪という落とし主の事情が気になってしまう落し物まで。

生ものから指輪まで。人の数だけ落し物あり
市場で働く人、観光客が行き交う正門前。

落し物を拾ったら届ける心遣い

378万3,260件。平成27年の一年間で警察に届けられた落し物の件数だ。そのうち持ち主への返還率は、携帯電話は81.9%、名前の書いていない現金は73.2%。何かを落としても戻ってくる確率の高さは、海外からも賞賛されるほど。〈小銭入れ、電源ケーブル、ポイントカード〉、どんなささいなものでも、拾ったら届けるのが当たり前。そして掲示板でみんなに知らせて、持ち主の手元に返してあげる。そんなTOKYO GOODが一目でわかる、築地市場の拾得物掲示板だ。

落し物を拾ったら届ける心遣い
拾得物掲示板は、正門横の交番前に。

データ

いつ始まったの? 1935年東京市中央卸売市場が開設。拾得物掲示板のスタートは不明。
どこで体験できるの? 築地市場の正門横。
おすすめの時期や時間帯は? 午前中の早い時間。時間が経つと、持ち主が現れて掲示板の品目が消されていく。
数字的データ 築地市場の広さ:230,836平方メートル
取り扱い数量(平成26年1日当り):
水産1,676トン(16億1,100万円)
青果1,095トン(3億2,300万円)
注意事項 場内はターレや人が忙しく行き交うため、働く人の邪魔にならないように見学することもGOOD MANNER。

取材協力:三村友香さん