Tokyo
009

みんなで乗り合うエレベーター

知らない人にも「開」ボタン

自分が最初にエレベーターに乗ったら「開」を押して、みんなが乗るのを待つ。「何階ですか?」と質問したりしながら、自分以外の人の階のボタンを押したりもする。日常の中で当たり前に行われるこんな心遣いが、海外からおもてなし精神だと称賛されている。近年は、車いす使用者にも操作しやすいように、低めに操作盤が取り付けられていたり、手すりや腰をかけられるイスがあったりと誰にも使いやすいように設備が充実しているが、正しい乗り方をしないと事故もおきかねないエレベーター。さらに快適に利用するために、プロが行なっている心遣いとはなんだろう。

知らない人にも「開」ボタン
乗る人がいる時には扉に手を添えて。

安全を第一に優先して案内する

平成21年に国の重要文化財に指定されていた日本橋髙島屋は、昭和8年の創業から続くエレベーターが現在でも稼働しており、1台につき1人の案内係が担当している。「今では珍しい手動ハンドルのエレベーターです。第二次世界大戦時には金属類回収令で一部を供出しましたが、戦後にもとどおりに復元し創業当初のデザインを現在も継承しています」と日本橋髙島屋の歴史を知るコンシェルジュの敷田正法さん。欧米でも手動ハンドル型は現存数が少ないから、懐かしいと見にくる海外のお客様もいるのだとか。案内を務める顧客係によると「私たちが第一に考えるのはお客様の安全です。扉に服を巻き込まれないようにガードしたり、どこからでもお乗りになるお客様が見えるようにミラーをつけたり、安全にご利用いただける配慮をしています」

安全を第一に優先して案内する
見えない角度からやってくるお客様はミラーで確認

知らない人同士の気遣いが安全につながる

東京にあるエレベーターは約15万台(平成26年/日本エレベーター協会)。知らない人同士が乗り合わせるエレベーターをみんなが安全に、気持ち良く利用するには、どんなところに注意したらいいだろうか。会社では、情報漏洩防止のため、エレベーター内で携帯電話の使用を控え、会話も極力少なくする。来客を乗せる場合は、1名ならドアを開けて先に乗ってもらい、複数の場合は先に乗りドアを開けて案内する。エレベーターを待つときは、降りる人のために扉の横で待つ。日本橋高島屋の顧客係は「エレベーターの中で皆様が快適に過ごせるように、お声をかけたり、しっかり目を見たりしています」。安全と快適性は、乗る人にささやかなのコミュニケーションから。知らない人同士の気遣いが安全につながるグッドマナーだ。

知らない人同士の気遣いが安全につながる
服が扉に巻き込まれないように。エレベーターマナーのヒントがつまっている。

データ

いつ始まったの? 1842年(天保13年)水戸藩主徳川斉昭が偕楽園の休憩所「好文亭」に設置した食事の運搬機が日本初のエレベーター。
どこで学ぶことができるの? 顧客係のエレベーターマナーを学ぶなら日本橋髙島屋へ。
おすすめの時期や時間帯は? 営業時間内(10:30〜20:00)。年末年始は営業時間の変更あり(元日休業)。
数字的データ 東京都のエレベーター台数:155,735台(2014年/日本エレベーター協会より)
注意事項 地震発生時、自動で近くの階に停止するエレベーターもあるが、そうでない場合は全ての階のボタンを押して近くの階から避難。

取材協力:日本橋髙島屋
 
参考:日本エレベーター協会