Tokyo
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おしぼりの気遣い、お箸の意味

畳文化とおしぼりの関係

レストランに入り席に着くと、お水とおしぼりが提供される。温かいおしぼりで手を拭くと、落ち着いて食事に向かう気持ちになる。このおしぼり、タオルタイプと紙おしぼりとがあるが、そもそも、おしぼりの文化は日本独特のもの。一説には室町時代に旅籠に到着したお客さんの手と足の汚れを落とすために、水桶と手ぬぐいを用意していたことが始まりと言われている。「現在でもおしぼりの文化が続いているのは、日本が畳文化であることと関係があります」と言うのは、ホテルオークラ東京が開催する「和食テーブルマナー講習」で講師を務める青木優佳さん。「本来は、食事に向かう前にお手洗いなどで、身支度を整え手を洗ってから席に着くのがマナーです。しかし、和室の場合は部屋に入り畳に手をついて挨拶をすることがあります。足を着く場所に手が触れるので、それをおしぼりで清めていただく意味もあるのです」。

畳文化とおしぼりの関係
おしぼりで手を拭いたら、軽くまとめておしぼり置きに戻して置く。

古来から伝わる食の作法

おしぼりは、軽く手先を拭うもの。顔や首を拭くものではないのでご注意を。手を拭いたおしぼりは、軽くまとめておしぼり置きに戻して置く。食事で口元が汚れたら、おしぼりではなくナプキンを使おう。ナプキンの使い方は、西洋料理と同じ。1/3を内側に折り込んで、内側で口を拭うと服を汚さない。
日本食のマナーでもうひとつ重要なのはお箸だ。お箸にも色々なタイプがある。「天削げ箸」は、持ち手と口をつける方向がわかるように片方の端を斜めに削っている。杉の柾目を使用し、木目が美しい高級なお箸だ。懐石やお客様をもてなす際に用いられる利休箸は、千利休が自ら削ってもてなしていたと言われている。「神人共食」を意味する両細のお箸は、片方は人が使うもの、もう片方は神様用とされており、神様と共にいただくことで、恩恵を授かるという古来からの風習に由来する。お正月や祝いごとに用いられる祝い箸は「角が立たないように」と丸箸で、柳の木を使っているため折れにくい。

古来から伝わる食の作法
上から、祝い箸、天削げ箸、利休箸。

食の作法はおもてなし

料理が運ばれてきたら、箸袋から箸を取り出し箸置きに。箸袋は御膳の左側に置いておく。和紙の帯がついたものは、切らずにスライドさせること。割り箸は中ほどを持ち、膝の上に引き寄せて扇を開くように割るときれいに割りやすい。箸先は3cm程度のみを使い、汚さないように意識することも重要だ。
「海外では日本食への関心が高まっているため、お箸を上手に操る海外のお客様は増えました。一方で、日本では正しいお箸の持ち方への関心が薄れてきている印象です」と青木さん。箸は毎日使うものだから、正しい持ち方を心がければ、食事の立ち振る舞いが美しくなる。それは一緒に食事を楽しむ人への心配りでもある。食の作法はおもてなし。守り伝えていきたい日本のGOOD MANNERだ。

食の作法はおもてなし
割り箸は膝の上に引き寄せて、扇を広げるように割る。

データ

いつ始まったの? 古事記の時代から、来客に手洗い桶と手ぬぐいでもてなしていたといわれている。
どこで学ぶことができるの? 和食テーブルマナー講習を受講するならばホテルオークラ東京へ。
数字データ 紙ナプキン生産数量:6,989,000,000枚(2015年度)
一般社団法人 日本衛生材料工業連合会HPより)
注意事項 おしぼりは手を拭くもの。顔や首を拭くのはマナー違反!