Tokyo
022

本で人が繋がるまちライブラリー

交流が生まれる新しい図書館

図書館とはなんだろう。図書館法によると「図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資することを目的とする施設」のこと(「図書館法第一章第二条(定義)」より)。「まちライブラリー」は、地域の人々が本を持ち寄り知識を共有する街の小さな図書館だ。カフェやオフィス、病院やお寺、個人宅のちょっとしたスペースに本棚を作り、みんなが自分のおすすめの一冊を持ち寄る。感想カードには寄贈者から借りる人へのメッセージが記され、借りた人はそこに感想を連ねていく。時には、感想を語り合う交流の場にも。本が人をつなぐ新しいコミュニティだ。

交流が生まれる新しい図書館
まちライブラリーは2013年グッドデザイン賞を受賞。

お稲荷さんの隣に小さな本棚

東京・四ツ谷にある長照山陽運寺は、「東海道四谷怪談」で有名なお岩さんをお祀りする縁結びのお寺。休日ともなれば、ひっきりなしに人が訪れる。お稲荷さんの傍らには、ベンチと小さな巣箱型の本棚。そこでひと休みしながら、本を手に取る参拝者も多い。陽運寺がまちライブラリーに参加したのは、2011年に提唱者の礒井純充さんに誘われたことが始まりだった。副住職の植松健郎さんによると「昔のお寺は、寺子屋があったり能や歌舞伎が催されていたりと、人が集まる場所だった。再びコミュニティの場所になるきっかけになれば」と参加を決めたという。本堂横の屋内のライブラリーは、毎月1日の開運祈願祭に合わせて開館している。屋外の巣箱型の本棚は、開門時ならだれでも利用可能だ。

お稲荷さんの隣に小さな本棚
屋外にある巣箱型の本棚。参拝者が本を手にする姿も。

地域の人が集まる場所へ

陽運寺のある場所は、オフィスビルが立ち並ぶ都会の真ん中。近年はマンションが増え新しい住人も多く、地域のつながりは希薄になりがちだ。「まずは、ここが地域の方のコミュニティの場に」と植松副住職。本を借りたら、返しに来て、そこで一言二言のコミュニケーションが生まれる。感想カードを通じて、価値観を共有したり新しい知識に触れることができる。本を通じた出会いもあるかもしれない。まちライブラリーは、現在、日本全国に460ヶ所。じわじわと広がる新しい日本のGOODだ。

地域の人が集まる場所へ
テーマを設けてセレクトしたコーナーも。

【データ】

いつ始まったの? 提唱者の礒井純充さんを中心に2008年大阪で10坪ほどの「ISライブラリー」がスタート。その後、2011年より本格的に日本全国に拡大している。
どこで見ることができるの? 日本全国まちライブラリーの場所はホームページでチェック。東京都内には45ヶ所ある
おすすめの時期や時間帯は? 開催する場所により、開放している日時が異なる。陽運寺は毎月1日の開運祈願祭の際に参加者にライブラリーを開放。屋外の本棚は開門時ならいつでも利用可能。(なお2017年6月〜10月はリニューアル工事のために屋内の利用は一部縮小)。
数字データ まちライブラリーの総数:460ヶ所
都道府県、市町村立、組合立等の図書館総数:3,331館
文部科学省『平成27年 社会教育調査』より)
注意事項 みんなの本だから取り扱いはていねいに。本の感想を記入する欄には、積極的にメッセージを書いてみよう。