2021.01.20
実施報告:シブヤ大学『Tokyo Good Manners Project × シブヤ大学 私の求める「仕事をする場所」のカタチ』

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コロナ禍にともないテレワークの普及が目に見えて進み、はたらく場所を任意で選べるようになった人も多い昨今。去る2020年12月17日にシブヤ大学とのコラボレーション講座として、はたらく場所のあり方について考える講座がオンラインで行われました。ゲストは有限会社ノオトの鬼頭(きとう)佳代さんです。

有限会社ノオトの編集者・ライターであり、同社オフィスに併設のコワーキングスペース「Contentz(コンテンツ)」の管理人を兼任中の鬼頭さん。「コワーキングスペースの運営もまた、「編集」の営みの一つ」だと話します。

2014年に立ち上げられたContentzは、およそ50名が会員として日常的に出入りするほか、土曜限定のドロップイン(一時利用)も可能。かつての雑誌編集部のように、居合わせた人同士が互いのネットワークや情報に触発されては仕事が前に進んでゆくイメージの「場」として運営されています。

定期購読の雑誌を含む1,500冊の蔵書。集中作業するための個別ブース。また近年の増床によってインタビュールームや居酒屋風・喫茶店風の打ち合わせブース、電話専用ルームなども追加。会員同士の交流会も季節ごとに行われています。(現在はコロナ対応として、リアルとオンラインのハイブリッドを模索中)。

利用者である近隣に住む起業家やフリーランス、そしてライター・編集者たちにとって高い利便性を備えたContentz。各利用者との個別対応やトラブル時の対応、備品管理に広報までをカバーする管理者・鬼頭さんですが、編集・ライティング業との兼務で割ける時間にも限りも。そこで、目指すべきは「なんとなく居心地のいい状態なのではないか」だと言います。

年齢や職業も異なる様々な利用者がいる場ならではの気遣い・思いやり、自発的な挨拶。ルールのしっかりとした共有はもとより、例えば食事後ならテーブルを拭いて他の人が気持ちよく使えるようにする、ウォーターサーバーの水が切れていたら補充するなど。そのようなちょっとした手間を利用者側に助けてもらいつつ、利用者・管理者とも気持ちよく一つの場所にいることが出来る。仮に共同利用上の困りごとが発生した場合でも、もともと良好な関係にあればこそ、利用者からは気軽に相談してもらえるし、管理者も対応出来る、というわけです。

ちなみに緊急事態宣言発令中は、クローズ時間を数時間前倒しするという「短縮営業」に。一時は休業も検討したものの、子育て中の利用者からの「どうしても仕事ができる環境を確保したい」というニーズなどを踏まえ、このような措置がとられています。

鬼頭さんの事例を受けて一つ目のワークショップは「仕事場に求めるもの、不要なもの」を受講者が各自改めて考えてみるというもの。ここでは、オンライン上でつながる相手との間で、より気軽な相談・雑談ほかインタラクションを可能にする仕組みがあれば、といった希望が約十名の受講者のうち多数から挙げられました。モニターで互いの顔が見えてはいても、その時々の感情の機微までは汲み取りにくいことはリモートワークにつきものの難しさのようです。他方では、テレワークであれば基本的にペーパーレスで良いという意見も多い中、紙出力して初めて誤字に気が付くケースもあるという指摘も。特に誤字脱字のなきよう細心の注意を要する業界などでは、実際の紙を使って確認したいシチュエーションが依然として存在するようです。

続いてのお題は「もしも、この(授業で同席している)メンバーで一緒にはたらくとしたら、誰に対してどんな配慮ができるでしょうか?」というもの。先立っての自己紹介の段階で共有出来た互いのパーソナリティに基づき「私なら、このように接したいと思う」などと配慮や接し方のアプローチを教え合うロールプレイングが行われました。互いの能力的な強み・弱み、快・不快などを前もって共有しておくことが、居心地のよい場をつくることにつながると実感できたようです。リモートで繋がるランチ兼雑談タイムを設けるのも良いのでは、という案も。

リアルなひとつの場を共有するのも、共同でものごとに向き合うのも、感性の異なる人間どうしにより行われる点は変わりません。互いを思いやる一方で、自分の求めるもの、相手の求めるものを互いに言語化し共有しておくことの大切さが、2時間をかけて浮かび上がってきた講座となりました。