2017.05.02
実施報告:市民大学マナークリエーション講座
日本橋街大學(2)「伝統文化は遺産ではなく、日常生活で活かしていくもの」

Tokyo Good Manners Project(TGMP)と日本橋街大學は4月21日、『作法の源流 小笠原流 弓馬術礼法小笠原流宗家ご嫡男 小笠原清基氏より直に学ぶ』を日本橋三越・新館9階カルチャーサロンで開催しました。
 清基氏は、弓馬術礼法小笠原流について、その根底にある教えや考え方、歴史、これからの展望などを織り交ぜながら紹介。さらにワークショップでは立ち姿勢、跪座(きざ/膝をつきつま先を立てた状態)、正座、お辞儀、お茶やお菓子の扱い方など、普段の生活でも活かせる身近な作法を教授しました。
 小笠原流礼法に連綿と息づく“無駄のない動き。自然なかたちの美しさ”。清基氏のお手本どおりに次々と作法を実践する受講生たち。立ち姿勢やお辞儀ひとつとっても、「まったくの別物。どの作法も想像以上に難しい。でもそれ以上に新鮮な驚きと発見がたくさんあっておもしろい」と、楽しい学びへとつながったようです。
 清基氏は「所作において動きのないところ、そして相手には見えないところに気持ちを込めるからこそ、全体の動きが美しくみえるのです」と締め括り、また講義終了後の受講生たちは「今度は流鏑馬に挑戦したい」、「作法はもちろん、茶道にも興味を持つよいきっかけに」など、さらなるステップアップや意欲を語ってくれました。

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講義中の風景。
受講生から「海外の方とのコミュニケーションを通して礼法が持つ役割」という質問がありました。
清基氏は小笠原流の考えのひとつに「進退中度」という教えがあるとしました。
「礼儀作法は相手のことを敬うこと。これはどの国においても共通すること。相手の背景を理解、尊重することで自ずとお互い歩み寄れるはず。そこで進退中度なのです。“物ごとは必ず度に当たる。つまり丁度よい落ち着きどころがある”ということです。押しつけ、あるいは物足りなさを相手、自分に残してはいけない。その塩梅が難しいのですが」

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ワークショップで実演する清基氏。
美しい立ちの姿勢では、「耳と肩の位置が直線になるイメージを意識し、重心は土踏まずの少し上のあたりに置く」とアドバイスしました。
ゆっくりな動作が丁寧だと思われがち。しかしそれは誤解で、すべての動きは呼吸のリズムに合わせているからだそうです。

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お辞儀、跪座、お茶碗の扱い方など、その所作はどれも難しく、この日まであまり使われてこなかった筋肉を使うことも多く、受講生たちから小さな悲鳴も??
清基氏は「畳だけで生活していた時代に忘れてきた筋肉」と表現し、苦しそうな受講生たちに笑いを添えました。

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受講してみて、いかがでしたか?

受講者の渡辺さんは「所作でも、動きのないところ、相手の見えないところにも心を込めるなんてこれまで意識してこなかった」と驚きの様子。「誰かと接するときは相手に自分の気持ちをしっかり残したいし、また相手からもらった気持ちの余韻をもっと大切にしていきたいと思います」

リンク:
日本橋街大學

過去の日本橋街大學マナークリエーション講座
第1回 「粋マナー、粋な笑い、知的好奇心」