2018.04.13
実施報告:市民大学マナークリエーション講座
「 日本橋街大學(11):江戸の食 粋マナー講座 第4回『猪鍋』」

2月10日、日本橋街大學とTokyo Good Manners Project(TGMP)はマナークリエーション講座『江戸の食 粋マナー講座 第4回「猪鍋」』を両国で創業300年の「しし鍋」の名店「ももんじや」にて開催しました。

表向きには肉食が禁止であったはずの江戸時代に、通称「ぼたん鍋」として庶民が秘かに食していたという猪鍋。ゲストにはタベアルキストのマッキー牧元さん、落語家の古今亭志ん吉さんを迎え、受講者をその独特の世界へと誘いました。

tgmp_inoshishi_0048

まずは、古今亭志ん吉さんの高座からスタート。演目は冬の囃の定番であり、しし鍋が登場する「二番煎じ」。江戸時代の旦那衆が火回りの休憩中に、「薬食い」と嘯き番小屋で酒をたしなみ、しまいには猪鍋までつついてしまう暴走を臨場感たっぷりに披露。40分にわたる大ネタにも関わらず、会場は終始笑いに包まれていました。中でも鍋を囲むくだりは、志ん吉さんの食べる仕草や煮込み方まで細部にわたる表現がとにかく粋で、受講者の食欲と好奇心を多いに掻き立てました。

tgmp_inoshishi_0066

続いては、マッキーさんによる猪鍋講座。江戸時代に肉食が禁止であった理由から庶民の間で秘かに猪鍋が食されていた背景を、古くは農耕が中心であった飛鳥時代や奈良時代の生活習慣や食文化の原点から紐解き語ってくれました。「庶民が稲作で年貢を納めながら生きていくためには、野生の動物の肉を食べていく他なかったんです」という話に、受講者は当時の人々の暮らしに思いを馳せながら真剣に聞き入っていました。「こうした歴史を知れば、なぜ江戸時代に猪鍋のことを“ぼたん鍋”、馬鍋のことを“さくら鍋”、鹿鍋のことを“もみじ鍋”と言い換えていたのかが自ずと分かりますよね」とマッキーさんが締めくくりました。

tgmp_inoshishi_0093

最後は、ももんじやの定番「猪鍋コース」を受講者みなで囲みました。この日の猪肉は腕の立つハンターが多く美味しいジビエがよく穫れるという兵庫県丹波地方から仕入れた猪肉。前菜として新鮮なままの刺身やローストを味わってから、いよいよお待ちかねであった「猪鍋」が登場。みそ仕立てのすき焼き風で煮込んで食べる猪肉は、程よい脂身とプリップリの歯応えで絶妙の美味しさ。猪鍋を初めて食べるという受講生も多く、各テーブルから感嘆の声が聞こえてきました。

tgmp_inoshishi_0022

大学を卒業後に26歳で入門、落語家としては遅いスタートであったという古今亭志ん吉さん。師匠である古今亭志ん橋さんからは礼儀作法やマナーといったことを細かく指導された経験はないと語ります。「覚えているのは、とにかく了見を持て、と言われたことですね。他者への想像力を常に働かせていなさいと。細かいマナーは時代によって変わって行くものだから、師匠に言われた了見を大切にしています。おのずと食べ方や振る舞い方にも気を配りますよね」

tgmp_inoshishi_0117

「落語はそばというイメージが強かったので、猪鍋が出てきておどろきました。とても楽しかったです」という鳴島さん。「やっぱり歴史や文化を知ると、仕草や食べ方にも気を使うようになりますよね。とてもよい機会になりました。」と語ってくれました。