Tokyo
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世界が注目する日本料理

ユネスコの無形文化遺産に登録

海外でも人気が高まる日本料理。観光庁の統計によると、訪日観光客の約7割が旅の楽しみは日本の食だと答えている。日本料理は、新鮮な食材を使い栄養バランスを考慮しているのはもちろんのこと、自然の美しさや季節の移ろいを表現し、年中行事とも密接に関わっている。2013年「和食;日本人の伝統的な食文化」として、ユネスコの無形文化遺産に登録された。ユネスコではほかにも「フランスの美食術」「メキシコの伝統料理」「地中海料理」「ケシケキの伝統」などの食に関する無形文化遺産が登録されているが、日本料理は、自然を尊ぶ日本の気質に基づいた食習慣が登録の理由だった。

ユネスコの無形文化遺産に登録
お椀の蓋を開けるときには、指をかけてくるりと手首を返す。

神仏への供物から、貴族、武士を経て庶民へ

現在の日本料理が、一般に広まったのは江戸時代から。その起源は、神仏に捧げた料理、神饌(しんせん)と考えられている。史実に残された最も古い料理は、位の高い貴族が特別な日に食べる大饗料理だ。生物や干物を切って並べ塩や酢をつけて食べる料理は、まだ中国からの影響が強かった。鎌倉時代から南北朝時代にかけて、禅宗の僧侶の間で発展したのが精進料理だ。室町時代、武士の勢力が強まると本膳料理が登場する。注目したいのは鰹節と昆布の出汁で作った汁が提供されていたこと。そして、茶の湯の発展とともに懐石料理が生まれ、旬の食材を使い季節を取り入れた料理が生まれた。戦乱の世が終わり、江戸時代に入ると飲食店が多数出現する。庶民も美食を楽しむようになり、料理書も多数出版されて調理方法が広まった。

神仏への供物から、貴族、武士を経て庶民へ
蓋の内側には鮎の蒔絵。器で季節を表現する。

ひとつのお椀が表現する日本の四季

現在の日本料理は豊かな味わいとともに、食材を際立たせる調理方法や高い芸術性が世界から評価されている。陰陽五行説に基づいた「木・火・土・金・水」の要素を取り入れた日本料理。それを体験できる和食・天ぷら「山里」の夏のお椀は、めじ鮪と昆布で引いた香りのよい出汁に、鱧、じゅんさい、冬瓜、にんじん、梅肉、吸い口に青ゆずが添えられている。全て旬の素材を用い、夏らしく爽やかでありながら口の中に旨味の余韻が続く。お椀の蓋には鮎の蒔絵。「日本食には作法もありますが、リラックスして楽しんでください」と、ホテルオークラ東京の和食調理総料理長、澤内恭さんは言う。笑顔で味わうのもマナーのひとつ。日本料理でTOKYO GOODな体験を。

ひとつのお椀が表現する日本の四季
冬瓜の青(緑)、梅肉の赤、人参の黄色、鱧で白、器の黒。この彩りも陰陽五行説から。

データ

いつ始まったの? 神仏に料理を捧げていた時代が日本食の源流と言われている。
どこで見ることができるの? 日本全国の日本料理店。和食・天ぷら「山里」のお椀は季節によって変わるので、四季を通じて楽しめる。
数字データ 訪日前に期待していたこと:日本食を食べること68.4%
観光庁 訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析(平成29年4-6月期)より)
注意事項 海外の日本食人気の高まりにより、訪日観光客に正しいお箸の持ち方が広まっているが、その一方で目立つのは、日本人の間違ったお箸の持ち方。毎日少しずつ意識することで、美しいお箸の持ち方ができるようになる。