Tokyo
007

定員のない酒場

始まりは、酒屋の店先

仕事帰り、一人でふらりと寄れる立ち飲み居酒屋があると嬉しい。軽くつまみを食べて、1〜2杯飲んでさっと帰る。日本のサラリーマンによく見かける光景だが、ここにも意外なグッドマナーがあった。そもそも「立ち飲み」は、江戸時代から一般的に行われていたと言われる。始まりは、酒屋で購入した酒とつまみを店先で飲食していたこと。酒屋は飲食店ではないので椅子を提供できず、自然と立ち飲みになったのだ。一時は廃れた立ち飲み文化も、現在は多様な居酒屋のスタイルの一つとして復活し、東京でも多く見かけることができる。

始まりは、酒屋の店先
100円前後の安くて美味しいつまみと、お酒。立ち飲み屋の醍醐味。

一歩詰めれば、みんな入れる

居酒屋が多いことで有名な東京都・赤羽。ここで立ち飲み居酒屋を構えて46年という「立ち飲み いこい本店」は、午前11時からお酒を飲めるとあって、赤羽を訪れる“のんべえ”たちの聖地となっている。夜になると店内はお客さんで埋め尽くされ、みんな寄り添うようお酒を飲んでいる。それでもまだ入ってくる客を、店員さんは追い返すことはない。「もうちょっと詰めてくださいね」「そこ、もう少し寄れる?」その呼びかけに従ってみんなが一歩ずつ詰めると、そこには一人分のスペースが出来上がった。この店に通って35年になるという常連さんは、「カウンターの真ん中で飲んでいたと思ったら、最後には右端まで移動してたってこともあるよ」と笑って話す。

一歩詰めれば、みんな入れる
満員に見える店内でも、みんなが少し詰めればスペースが生まれる。

居心地のいい場所にするため、生み出されたマナー

立ち飲み屋のルールはたくさんある。大人数ではいかない、大きい荷物は持ち込まない、泥酔状態で入らない、香水をつけすぎない、小銭を用意する、長居はしない……など挙げればキリがないが、これらは特にお店が言い出したことではないという。常連客がトラブルを避けるために気をつけていたことが、自然と新しい客へ伝わり、当たり前のマナーとなっていった。「店側としてみなさんに大切にしてほしいのは、周りに迷惑をかけないこと。あとは食べ物と飲み物を楽しむこと、それだけです」と語るのは、店主の西野さん。みんなにとって居心地のいい場所を作るには、一人一人のグッドなマナーが必要不可欠なのだ。

居心地のいい場所にするため、生み出されたマナー
携帯禁止の張り紙は、美味しくお酒を飲んで欲しいからだという。

データ

いつ始まったの? 江戸時代。酒屋の店先でのちょい飲みから始まった。
どこで体験できるの? 飲み屋街やガード下など。場所でいうと、赤羽、立石、大井町、新橋、吉祥寺などに多い
おすすめの時期や時間帯は? 平日の19時前後や週末に行けば、お客さんで一杯のワイワイした雰囲気が楽しめる。
数字的データ 平均予算:約1,200円/一人
平均滞在時間:40分弱
注意事項 お礼や挨拶などのコミュニケーションは必要だが、一人で静かに飲みたいお客さんもいるので迷惑にならない程度を心がけよう。