Tokyo
014

戻ってくる忘れ物

忘れ物が戻ってくる日本

「忘れ物が戻ってくるなんて」と、日本を訪れた観光客から驚きの声が上がっている。警視庁の統計によると、平成27年度に届けられた拾得件数は378万3,260件。そのうち現金は73.2%、財布63%、携帯電話81.9%が持ち主の手元に返還された。忘れ物を見つけたら交番や駅に届ける。そんな気配りから始まって、忘れ物が持ち主に戻るまでに、どんな道のりを辿っているのだろう。都営地下鉄や都営バスなどの忘れ物が集まる「東京都交通局お忘れものセンター」に話を聞いた。

忘れ物が戻ってくる日本
傘は日時や路線ごとに仕分けして保管。

忘れ物はシステム管理

例えば、駅のホームに置き忘れたバッグ。駅の職員に届けられ、日時・場所・内容や色、形状が遺失物管理システムに情報登録される。どこかに持ち主が特定できる情報があれば、駅から直接連絡することも。持ち主から問い合わせがあり、本人だと確認できれば返還し、連絡がなければ、2〜3日後に東京都交通局お忘れものセンターへ。到着した日時、種別、届け出のあった路線ごとに仕分けされ、1〜2日後には警視庁の遺失物センターで3ヶ月間保管される。次々と場所を変える忘れ物だが、情報は全てシステムで管理しているから、その時点でどこにあるのかはすぐにわかる。警視庁で保管されていれば、インターネットの警視庁「落とし物検索」ページから探すことも可能だ。

忘れ物はシステム管理
忘れ物ごとに日時や管理バーコードのタグがつく。

ていねいに扱われる忘れ物

「お忘れものセンター」に集まる忘れ物は、1日平均300〜400個。最近では、スマートフォンや交通系ICカードも増加しているという。過去には、弓道に用いる弓や換気扇の羽、カブトムシが飼育容器ごと届けられたこともあった。雨の翌日は、傘の忘れ物が増えてくる。濡れていれば、広げて乾かしてから保管。梅雨の時期は、センターが広げた傘でいっぱいになることも。生鮮食品は傷みやすいため、翌日に廃棄。お弁当箱の忘れ物は、傷んだ中身を捨て容器を洗ってきれいな状態で保管する。持ち主がうっかり忘れた物たちは、こんなにていねいに扱われているのだ。忘れ物を届ける、ていねいに保管する、持ち主の元に戻る。気配りの心がつながる、世界に誇るTOKYO GOODだ。

ていねいに扱われる忘れ物
拾得物の届け出、現金など一定期間経過後の拾得者の受領など書類で管理。

データ

いつ始まったの? 718年制定の「養老令」第28条捕亡令に、遺失物を拾ったら届けよとの記述がある。
どこで見ることができるの? 忘れ物は交通機関、商業施設、路上など、至るところに。見つけたら近くの職員、係員または交番に届けましょう。
おすすめの時期や時間帯は? 雨の翌日は傘。冬になると手袋やマフラーの忘れ物が増える。
数字的データ 平成27年度中の拾得件数:378万3,260件(警視庁)
注意事項 大切なものには名前などを記入しておくと、戻ってくる確率が高くなるかも。