Tokyo
017

美しく包む、美しく贈る

風呂敷からハトロン紙へ

「ありがとう」「おめでとう」の気持ちを込めた贈り物。それを一層、華やかに演出してくれるのがラッピングだ。現在は、お店ごとにオリジナルの包装紙があり、リボンなどの包装材も豊富だが、さかのぼれば、日本の包装文化は風呂敷が始まりだと言われている。すでに奈良時代には存在したとされる風呂敷は、広く庶民にまで普及したのは江戸時代だった。1904年(※)には日本初の百貨店「三越呉服店(現・三越)」となり、百貨店で贈答品を買うことが人々の憧れに。三越では新築予定の新館や干支を図柄にした特別な包装紙が使われることもあったが、当時の百貨店では薄茶色のハトロン紙が定番だった。

(※)江戸時代延宝元年に「越後屋」創業。のちに三越となる。

華がひらき「実り」を迎える物語

現在、三越で使用されている包装紙「華ひらく」は、1950年に洋画家の猪熊弦一郎氏に依頼しデザインされたもの。千葉県・犬吠埼海岸を散策中、荒波に打たれて角のとれた丸い石を見て「波にも負けずに頑固で強く」をテーマにしようと考えて生まれたという。この抽象的なデザインに、当時、三越宣伝部の社員だった漫画家、やなせたかし氏が「Mitsukoshi」のロゴを書き加え、日本の百貨店初のオリジナル包装紙が完成。それから半世紀以上、三越のシンボルとして愛されている。2014年には、ショッピングバッグをリニューアルし、人間国宝の友禅作家、森口彦氏による「実り」が誕生。これはたわわに実るりんごを幾何学模様で表現しており、包装紙で「華ひらく」、ショッピングバッグで「実り」を迎えるという1つの物語となっている。

包み方にも気持ちを込めて

三越のラッピングは、贈り物を受け取ったときに喜ばれる美しい包装を心がけており、不要なテープ留めをしない。小さなものなら1ヶ所、大きなものでも数カ所のテープで包装紙を留めている。テープを外すと、まさしく「華」のようにふわりと開く。また、最終的な包装の形が祝儀ごとなら右前で、「良いことがたまりますように」と袋の口の部分が上側に開くように包んでいる。反対に不祝儀ごとは左前で「災いが落ちるように」と袋の口の部分が下側に開くように包む。それは、風呂敷文化やご祝儀袋から発展したもの。贈り物は、細部にまで人の気持ちが込められている。丁寧に手から手へ。未来に守り継ぎたいTOKYO GOODだ。

包み方にも気持ちを込めて
贈る人の心をラッピングにこめて。
どんな形の商品でも、正面には三越のロゴが見えるように包装されている。
三越のシンボル「華ひらく」と、新たに登場した包装紙。

データ

いつ始まったの? 1950年三越のオリジナル包装紙「華ひらく」誕生。
どこで見ることができるの? 日本全国の三越で見ることができる。
おすすめの時期や時間帯は? 一年中見ることができる。お中元、お歳暮の季節は混み合うことも。
数字的データ 平成24年包装用紙の年間生産量:871,372トン (政府統計『紙・印刷・プラスチック・ゴム製品統計年報』より)
注意事項 三越のラッピングはテープ留めの箇所が少ないから、開けるときはなるべく破かずに。美しい包装紙を再利用することもできる。