あたりまえになった整列乗車
謎に包まれる整列乗車の発祥
静かに列に並び、降りる人を待ってから乗車。日本では当たり前になった朝の光景だが、誰もがマナーを守る様子に海外からの観光客は驚くことも多いのだとか。その整列乗車は、いつ頃始まったのだろう。諸説あるけれど、有力なのは戦後すぐに銀座線渋谷駅で誕生したというもの。ホームに溢れた乗客を、駅員が列をつくるように一人一人説得、プラカードを体の前後に下げて呼びかけた。それから定着した整列乗車は、昭和22年に鉄道省(当時)から表彰されるほど。

乗客と鉄道のコラボレーション
国鉄山手線も、昭和30年代頃には朝のラッシュ対策として整列乗車を採用。当時は乗客がきちんと整列しても、到着した電車のドア位置がズレてゾロゾロと列ごと移動したこともあったのだとか。車両によって3ドアと4ドアが混在していた山手線は、昭和45年に全車両の統一が実現。停車位置が定まり、整列乗車もスムーズに。現在のスムーズな整列乗車は、乗客の気づかいと鉄道会社の努力の結晶なのだ。

整列乗車の並び方
では、実際に整列乗車に挑戦してみよう。駅のホームで足元の「乗車位置」「先発」「後発」の表示を確認し、どこに並ぶか見定める。東京メトロではホーム整理員が配置されているので、聞いてみてもいい。静かに列に並んだら、あとは待つだけ。7:00〜9:00のピーク時は約3〜5分おきに到着するので、駆け込んだりせずに落ち着いて乗車を。ちなみに、朝の1時間に電車を利用する人数は、中央線(快速/中野〜新宿間)で83,260人、地下鉄東西線(木場〜門前仲町間)で76,665人。これだけの人が一度に利用しても混乱しない、整列乗車は東京のグッドマナーだ。

データ
いつ始まったの? | 昭和20年頃 |
どこで体験できるの? | JR東日本山手線他各線の主要駅/東京メトロ各線の主要駅 |
おすすめの時期や時間帯は? | 平日の7:30〜8:30頃 |
数字的データ (広さ、重さ、数(年月日)) | 1日平均の駅別乗降客数トップ3(2015年度): JR東日本/1位新宿駅760,043人、2位池袋駅556,780人、3位東京駅434,633人 東京メトロ/1位池袋駅548,839人、2位大手町駅313,620人、3位北千住駅289,001人 |
注意事項 | 朝のピーク時に電車を利用する際は、整列乗車のために10分ほど余裕を持って家を出よう。 |
参照:
帝都高速度交通営団『営団地下鉄五十年史』
東京メトロ『あしたのメトロ 銀座線』
猪口信『国鉄列車ダイヤ千一夜』(交通新聞社)
国土交通省『東京圏における主要区間の混雑率』(平成27年度)