Tokyo
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1,000人が一緒に楽しむ映画館

日本初の映画館は、娯楽の街・浅草から

日本に映画が上陸したのは、1896年(明治29年)の神戸。エジソンが発明した活動写真装置「キネトスコープ」による上映だった。その後、1903年(明治36年)になると、庶民の娯楽の中心地・浅草に日本初の映画専門劇場「電気館」がオープン。当時は海外作品が中心だったが、戦後次々と国産映画が誕生し、映画は一大娯楽産業に成長した。多種多様なエンターテイメントが発達した現在でも、映画館での映画鑑賞は娯楽の第3位にランクインしている(総務省「平成28年社会生活基本調査」より)。人々が1つのスクリーンの下に集まる映画館。鑑賞中のマナーが注目されるようになったのは、1990年代、日本にシネマ・コンプレックスが登場した頃からだ。

日本初の映画館は、娯楽の街・浅草から
脚を組んで鑑賞していたつもりが、つい前の席を蹴っていたなんてこともあるので注意しよう。

上映中に鳴り響く、携帯の着信音

それまでの映画館は、賑やかな繁華街にあることが多かった。シネマ・コンプレックスが大型ショッピングモールに併設されると、家族連れや小さな子どもなどこれまでよりさらに多くの人が足を運ぶようになった。多くの人が集まるようになると、浮上してくるのが鑑賞マナーの問題。1990年代半ばに携帯電話が登場すると、上映中の着信音が問題となった。TOHOシネマズが観客に向けてマナーを呼びかけを始めたのは、2001年『ラッシュアワー2』の公開時。その宣伝において、作品の登場人物が携帯の電源オフを呼びかけるスライドを上映した。2007年には、新作映画のインターネットへの流出が問題に。それを受けて「映画館に行こう!」実行委員会による映画盗撮防止キャンペーン「NO MORE 映画泥棒」がスタートする。

上映中に鳴り響く、携帯の着信音
スマートフォンはマナーモードにしても、着信時の画面のバックライトが周囲の迷惑に。メールチェックは鑑賞後に。

オリジナルムービーで楽しくマナー啓蒙

スライドでマナー啓蒙をしていたTOHOシネマズは、2009年にギャグアニメ「秘密結社鷹の爪」のキャラクターによるオリジナルのマナームービーを製作。携帯電話の電源オフ、禁煙、前の席を蹴らない、私語と飲食時の騒音を控えてほしいとユーモラスに呼びかけた。これが好評を博し、映画館各社で趣向を凝らしたマナームービーが登場するようになる。現在は、携帯電話がスマートフォンに進化。マナーモードの普及によって着信音の問題は減少したが、一方で上映中に携帯メールをチェックする人が増え、バックライトの光が上映を妨げる問題が浮上している。映画館は、たくさんの人が一緒に同じ作品を楽しむことができる場所だ。歴史あるTOHOシネマズスカラ座は654席、日本最大級の映画館、TOHOシネマズ日劇は946席(「日劇1」/2018年に閉館予定)。1,000人近くの人が同じ時間を共有する。だからこそ、ひとりひとりがGOOD MANNERを心がけ、楽しい映画体験を。

オリジナルムービーで楽しくマナー啓蒙
TOHOシネマズで2014年から現在まで上映されているオリジナルマナームービー。
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データ

いつ始まったの? TOHOシネマズによるマナーの呼びかけは2001年『ラッシュアワー2』公開時。
どこで見ることができるの? マナームービーを見るなら日本全国の映画館で(一部上映のない映画館もある)。
数字データ 「趣味娯楽」の種類別行動者率:映画館での映画鑑賞39.6%
総務省「平成28年度社会生活基本調査」
注意事項 マナーの鉄則は周りの人に迷惑をかけないこと。その範囲で思う存分映画を楽しもう。

取材協力:TOHOシネマズ