2019.05.16
実施報告:市民大学マナークリエーション講座 自由大学「Tokyo Good Manners Project×自由大学 Urban Gentlemanの作法 世界最高峰のビジネスパーソンが凡人に嫉妬をするマナーとは?」

2月17日、自由大学とTokyo Good Manners Project(TGMP)による「Urban Gentlemanの作法」の講義第三弾が「みどり荘 永田町」にて開催されました。

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講義三回目のゲストは、三菱商事に勤める嶋勇吾さんです。嶋さんは、食品分野において海外でのM&Aや新規事業開発などに取り組んでいます。「世界最高峰のビジネスパーソンが凡人に嫉妬をするマナーとは?」をテーマに、これまでの経験から得た知見を共有しました。

はじめに嶋さんが語ったのは、日系人として育った祖父のフレッド吉田さんについて。1943年の太平洋戦争時、日本軍に従軍していたフレッドさんは、和歌山県の捕虜収容所の看守に任命されます。捕虜への虐待が横行していた時代に、フレッドさんは捕虜たちの処遇改善に尽力。捕虜たちの信頼をあつめ、終戦から数十年後が経過しても交友関係が続いたそうです。

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続いて、嶋さんは自身の小学生時代を振り返ります。当時、いじめられていた中国人のクラスメイトを守り通すことができなかった辛い経験があり、以来、社会の不寛容や偏見をなくしたいと強く願うようになったそうです。

講義の中盤は、ワークショップを実施。参加者は「自分にとって一番大切なこと」について発表しました。ワークショップでは「社会課題を見て見ぬふりしない」「多様性を受け入れる」「悩む人を進むべき方向に導く」などの意見が挙がりました。

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じつはこのテーマは、嶋さんがスタンフォード大学出願時の作文試験の課題に出されたもの。嶋さんは祖父の体験や小学生時代の体験をもとに、「他人に寄りそう」ことの重要性を文章につづりました。

他人に寄りそうことの大切さは、ビジネスの場面で多く目にするそうです。たとえば、海外にも市場を展開する衣料品メーカーの代表者と新規事業に取り組んだ際、その人は初対面の嶋さんに「あなたが将来何をしたいのか教えてほしい」と切り出し、肩書きや経歴を気にしない寛容さを見せたそうです。

また、パキスタンで新規事業を立ち上げるにあたって、地元のパートナー企業の代表者が日本を訪れたときのこと。その人は嶋さんの上長に対して「イスラム原理主義やテロリストなどパキスタンは危険な印象があるかもしれません。しかし、それはごく一部の側面に過ぎず、パキスタンも日本に負けないくらい美しい国です」と説き、上長の抱える不安を払拭したそうです。

最後に嶋さんは、国内企業が海外進出する際の指針について触れました。「『国益』ではなく『消費者』のことを一番に考えてほしい。地元に雇用を生み、地域貢献して再び再投資する。その国のためにできることを考えるが最低限の“マナー”です」

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人は人種や出自、性別など表層的なことにとらわれて、隔たりをつくってしまうことも珍しくありません。今回の講義を通して、他者と本質的に向き合うことの大切さを学べました。