桜守が咲かせる満開の桜
樹齢80年を超える国立の桜
国立駅からまっすぐ南に伸びる通称「大学通り」。通りを挟んで左右に一橋大学を有するこの通りには、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、オオシマザクラなど約170本の桜が植えられている。この桜並木は、昭和9年と翌10年に、当時の谷保村(現・国立市)の青年団や市民たちが植樹したことが始まり。その後、大学通りの南側に左右にのびる「さくら通り」が生まれ、2つの通り合わせて約400本の桜が毎年、花を咲かせている。春になれば桜のトンネルになるこの場所も、環境の悪化や老化などで弱ってきた木もある。それを自治体と一緒に守ってきたのが「くにたち桜守」だ。
桜を守る市民たち
代表の大谷和彦さんがこの活動を始めたのは、トラックの荷台に引っかかり樹皮が大きく剥がれた桜を見つけたことがきっかけだった。見渡してみると、幹にコケやキノコが生えるなど樹勢が弱った木が目立つ。桜の周りの土壌は、花見やバス停への近道のために踏み固められていた。このままでは桜が危ないと感じた大谷さんは市民に呼びかけ、桜の周りに草花を植えたり、桜の傷口を保護したりするボランティア活動を始めた。そして2000年に国立市と協力して桜を保護する市民ボランティア団体「くにたち桜守」が発足。「大学通りは、通勤や通学で利用する人が多く、桜や銀杏にも目を向けない人がほとんど。まずは子どもたちに関心を持ってもらいたいと、近隣の学校で出張授業をしています」と大谷さん。桜が咲く直前の3月にも、子どもたちが描いた桜の花の絵を歩道沿いに飾る活動をしていた。「桜は地中の浅いところに根を張るんです。だから桜の絵は木の周りの土を保護する役割もあります」。
桜を通して誇れる街に
桜のそばには、小枝が植えられたポットがいくつかあった。「ヤマザクラやオオシマザクラも種から育てています。もっと育てば植樹もできます。保護するだけでなく、新たに植樹して桜を更新していきたい。みんなに桜をきっかけにして、地球環境にも目を向けてほしいと思っています」。今年も樹齢80年を超える初代の桜も花を咲かせた。「近くで見ると、樹皮がひび割れて今でも成長を続けているのがわかります。土壌を改良したり、周囲の環境を整えて100年桜を目指しています」。桜を通して、国立をみんなが誇れる街にしたいという大谷さんは言う。桜を愛するひとりひとりの気持ちに支えられて、今年も満開の桜並木。それはTOKYO GOODな光景だ。
データ
いつ始まったの? | 江戸以前は、庭園などの樹木を守る番人を「木守(こもり)」と呼ばれていた。1964年に小説『桜守』(水上勉・著)から「桜守」という言葉が広まった。 |
どこで見ることができるの? | 国立の桜並木は、国立駅南口を降りてすぐ。1.3キロの道のりが桜色に染まる。 |
おすすめの時期や時間帯は? | 3月下旬から4月上旬にかけて。 |
数字データ | 過去6年間の桜の開花日: 2011年3月28日、2012年3月31日、2013年3月16日、2014年3月25日、2015年3月21日、2016年3月26日 (参考:気象庁ホームページ) |
注意事項 | 桜の根を保護するために、桜は遠くから全体を眺めましょう。桜の下での宴会や、ゴミのポイ捨てはマナー違反。 |
取材協力:くにたち桜守