2017.08.04
実施報告:市民大学マナークリエーション講座
日本橋街大學(7)「物の受け渡しとは機能と形状もしっかり考慮すること」

日本橋街大學とTokyo Good Manners Project(TGMP)は7月28日、第2回目となる『作法の源流 小笠原流 弓馬術礼法小笠原流宗家ご嫡男小笠原清基氏より直に学ぶ』を日本橋三越・新館9階カルチャーサロンで開催しました。
今回は“物の扱い方と受け渡し方”。清基氏は鋏やカッター、扇子といった実生活に身近な物を取り上げ、その作法を解説、実演しました。
例えば、鋏。手渡すときは閉じた刃を握って柄の部分を相手に差し出す――受講生たちの身振りを確認したうえで、清基氏は閉じた刃元あたりの峰を摘み、柄を相手に向けて紙飛行機を飛ばすような形を見せました。
「握ることを何度も重ねてしまうと刃はやがて錆びてしまいます。また相手にとって指穴の位置は正しいのか、それも配慮します。物の受け渡しとは相手と自分の単純なやりとりではなく、その物の持つ機能と形状をしっかり考慮することも含まれています」。
清基氏の説明に受講生たちも納得の様子。さらに物を変えて、清基氏の実演のもとでひとつひとつ丁寧に取り組んだ受講生たち。「ちょっとした動作にも洗練が必要。見た目の美しさも変わってくる。これも新鮮な気づき」と関心をより高めてくれたようです。
「渡したら終わりでなく、残心、つまりその動作にしっかり心を込めて、終えたあとも心を残すことで自ずときれいな所作が生まれます」というアドバイスも。また反復稽古の重要性も説き、「知っていることと、できることはまったく違います。知識をもとに何度も繰り返すことで磨かれ、やがて身につきます」。

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刃の向きやどこを持てばいいのかなど、実際の前差(まえざし)を用いて刃物の扱い方を解説。
刃は上向き、刃先の向きは持ち手の肩よりやや外側、刃を相手にしっかり見せるのが正しい作法。
「刃が肌に近いほど思いがけずに切ってしまったり、刺さってしまうおそれがあります。刃を見せるのは見えないことへの不安を取り除くという相手への配慮です」。

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カッターで実践。「刃を仕舞うほうがいいのでは」という問いに、清基氏は「相手がすぐに使うなら出したまま、使わないと判断したら仕舞う。そういう状況の見極めも礼儀のひとつ」だとしました。

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鋏の正しい手渡し方を披露。紙飛行機を飛ばすような持ち方に受講生たちも驚いた様子。

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清基氏の教えどおり、鋏の正しい手渡し方を練習する受講生たち。「持ち方を変えるだけで所作が美しく見える」と実感も持てたようです。

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扇子の開き方も教授。親骨を上に要を持ち、左手の親指で扇面を押し出すように一面ずつ静かに開いていきます。ただし、すべての扇面を開かず一面を残すことが肝心だそうです。「なぜなら満ちたものは欠けるだけ。つまり完成はやがて衰退を招くという教えです」と清基氏。

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「これまでの所作は自分の思い込みだった」と語る小野寺さん。「なぜそうするのか、その理由を解く基本的な考え方を丁寧に解説してくれたので、すんなりと理解することができました。物に対する考え方、捉え方も変わり、またすぐに実践できる所作ですので、常に意識しながら磨きあげていければと思います」

リンク: 日本橋街大學

過去の日本橋街大學マナークリエーション講座
第1回 「粋マナー、粋な笑い、知的好奇心」
第2回 「伝統文化は遺産ではなく、日常生活で活かしていくもの」
第3回 「江戸情緒溢れる町並み佐原散策 ~神職に学ぶ参拝作法と古民家ランチ~」
第4回 「串打ち3年、割き8年、焼きは一生、好奇心も一生、笑いも一生」
第5回 「英語によるおもてなしをめざして。」
第6回 「ロールプレイングと掛け合いで会話力をブラッシュアップ」